悲しい決断

彼の言葉は本当に嬉しかった。私も出来る事なら彼と彼との子と3人で家族になりたいと本気で思ったと同時に18という若さや、これからの生活、彼に対する周りの目などを考えると不安でいっぱいになった。それ以前に、私の進路は決まっており、親が既に学費を支払った後だったこと、中途半端な自分は両親に打ち明けられるほどの勇気は持っていなかった。そうとう考えた。親友にも相談した。でも最後は自分で決めるしかない、それはわかっていた。私には悲しい決断しかできなかった。

新しい命

彼はどんどん変わっていった。誰もがビックリする程に。その頃、私のお腹には新しいいのちが宿っていた。私は刻々と迫る彼との別れの時を考えるあまり、自分自身の体調の変化に気づきもしなかった。気づいたのは私が地元を離れるまでに1ヶ月あるかないかの時であり重大な選択に迫られていた。彼がひと仕事を終えて帰ってきた時、彼はどう思うんだろうとドキドキしながら彼に全てを伝えた。元々、子どもが大好きだった彼は戸惑うこともなく「俺は生んでほしい!」と言った。

変わる彼

私たちが出会ってから、彼はどんどん変わっていった。初めは先輩や周りから色々言われたり、いきなり待ち伏せされ喧嘩を売られたりハラハラする事ばかりだった。反社会勢力との繋がりがあった彼は中卒だったが、ろくに仕事もせず、ご両親も半ば諦めていたのかもしれない。彼の家は船を所有して漁にでる、いわゆる漁師の家系だった。本来なら、つがなければならなかったがご両親を困らせてばかりいた。そんな彼は私に「俺、これからは真面目に働くよ。かたぎになる。」と言って家の仕事を手伝うようになった。1〜2週間、仕事で帰らないこともあったが、夜は必ず公衆電話から電話をかけてきてくれた。私は嬉しくてたまらなかった。

大事な話

彼と私が出会ったのは私が高3の冬、12月。この時、既に私の進路は決まっていた。県外の専門学校に入学することになっていた。専門学校は1年で卒業できる学校ではあったが、彼とずっと一緒にいたい、離れたくないという気持ちから、私はこのことを話せずにいた。話したら彼が離れていってしまうんではないかと怖かったからだ。でも、きちんと話して残りの時間、少しでも一緒にいられるなら一緒にいたいと思い、話すことにした。彼は1年間待っててくれると言ってくれた。それから会える日はいつも一緒に過ごした。たくさん愛し合った。

 

不安じゃなくて心配

一夜を共にした後から、私たちは時間さえあれば一緒にいた。頻繁に会いにきてくれる彼に、もう不安な気持ちは微塵もなかった。一緒にいる時は凄く楽しかったし本当に仲良しだった。ただ、不安が消えたと思ったら心配事が耐えなくなった。彼は素行が悪くて有名だ。待ち合わせ場所に突然、暴走車が横付けして柄の悪い人たちが殴りかかってくるなんてドラマのような事が度々あった。どんな状況においても彼は全力で私を守ってくれる。でも、相手が何人もいれば当然、一方的にやられてしまうこともある。私は目の前で殴られている彼をただ見ているしかなかった。。。そして、もし私がいない時に、彼が1人の時に待ち伏せでもされていたら。。。そんなことばかり考えるようになり心配が絶えなかった。

初めての夜

クリスマスデートから間もなく、迎えるお正月、私は彼の家へ行き夜を共にし初めて一緒に朝を迎えることになった。彼の地元の友達と私の友達が付き合っていたということもあり、大晦日はWデートをした。色々な噂から一時は不安で一杯だったこともあったが、彼と過ごす時間が増えるたびに、その不安は安心に変わっていった。誰もが大袈裟だというくらいに彼は全身で愛情を表現してくれた。すーっと一緒にいたいと思った。友達と別れ、彼の家へ初めてお邪魔する事になる。彼の両親は暖かく私のことを迎えてくれた。彼の子どもの頃のことや生い立ち、複雑な家庭環境であったことを全て話してくれた。私は今まで以上に彼が愛おしくてたまらなくなった。そして私たちは初めて結ばれた。

初デート

彼は無事、免許を取得し私より先に自動車学校を卒業していった。これまでは自校で会うだけだったが、付き合って初めてのデートはクリスマスイヴの日になった。冬休みに百貨店でバイトしていた私を迎えに来てくれた彼は決してお洒落な格好をしていたわけではなく、連れて行ってくれたお店もムードのあるレストランではなく賑やかな居酒屋ではあったが、彼との初デートに私の胸はドキドキが止まらなかった。何をしてる時も優しく気遣ってくれる彼にどんどん惹かれていく自分が不思議でたまらなかった。食事が終わりドライブにでかけた。車を停めて冬の夜空を見上げながら私たちはたくさん話をした。そして私は初めて、大人のキスを交わした。