信じてみよう

私は意を決して切り出した。彼の女関係について。彼はこう言った。「確かに今までは色んな女に手を出してきたけど、もう連絡はとってないし信じてほしい。」私はなんで私なんかと?と続けた。「ビール飲みすぎない方がいいよって言ってくれたでしょ?俺、そんなこと言われたの初めてなんだよね。本気で心配してくれてるっていうか。」と言った。あの時は何の気無しに言った言葉だったが、既に彼に心を奪われていた私は心の中で自分を褒めた。そして信じようと思った。数日後、彼の地元の友達から彼が私と出会った事を嬉しそうに話してたし、あいつなんか変わったよ。本気なんじゃん。と言ってくれた。

私が彼を大好きになった理由は簡単だった。誰にでも一度は訪れるであろう悪っぽい男に何故か惹かれる時だったに違いない。ただ、彼と付き合うようになってから私の耳に入るのは彼の悪い噂ばかりだった。私は高校生で彼は同い年だが中卒で仕事もしてたかどうかはわからず、反社会勢力との繋がりがあることや、色んな女と関係を持ちあちこちに女がいるなど、そんな話しか入ってこなかった。自分で言うのもなんだが基本的に一途だった私にとって不安と心配とで胸が苦しくて仕方なかった。噂を鵜呑みにするのではなく、彼からきちんと本当のことを聞こう。私に対する想いも含めて。。。そう決意し自ら切り出した。

彼の存在

高3の冬、私は初めて心の底から好きだと言える人ができた。それが彼だ。私はそれまで誰も好きになったことがないと言うわけではないが、どちらかというと奥手の方でグループ交際くらいのレベルでしか異性と付き合った事はなかった。初めての彼氏といえる存在だ。彼は地元では有名なワル(不良)だった。私にはちょっとヤンチャなくらいにしか見えてなかったが相当なワルだったらしい。付き合った後、中学時代からヤンチャしてた友達に報告すると、「え?ほんとに⁈」「やめた方がいいと思う」と。高校で休み時間に怖い先輩達がいきなり教室に入ってきて「○○○と付き合ってるのって誰?」この時、大変な人を彼氏にしてしまったのかもしれない。。。と初めて思った。

いつも一緒

あの電話を境に私たちは会えば必ず行動を共にした。自校で受ける授業が違ってても、彼は私のことを待っていた。授業がない時間帯は一緒に外出した。2人きりではなく彼の友達も一緒だったが、私にとっては何故か心地よく、いつも笑っていた。私たちが通う自校から歩いて行けるところにもう一つ自校があり、ある時、一緒にそこへ遊びに行った。帰りはすっかり暗くなっていて大声でゲラゲラ笑いながら皆んなで帰ってくる途中彼は私に「付き合って」と言ってきて、からかわれてると思った私は「何言ってんの?」って笑って言うと、一台の大型トラックが前から走ってくるのが見えた。彼は突然、道路の真ん中に飛び出しトラックを前に手を広げてこう言った。「僕は死にません。」当時、大ブレイクしていたTVドラマのワンシーンだ。彼は「本気だから俺と付き合って」と真剣な顔で言った。あまりにも彼の無謀な行動に「わかったから!危ないからもうやめて!」と言うしかなかった。そして私たちは付き合い始めた。

初めての電話

バスの中で電話番号のメモを渡されてからどれくらい経っただろう。1週間くらいだろうか。彼は私の住んでいるところから1時間は離れたところに住んでおり、その当時、私の親友の彼氏が住んでいる地域と同じだった。親友の彼氏から「あいつ、毎日電話待ってるって」「一回でいいからかけてやってよ」と何度か言われ、その時点では彼のことを何とも思っていなかったが、しつこくされるのも嫌だからと、ある夜、電話してみることにした。「もしもし?」「もしもし!ずっと待ってたよ。ありがとう!」彼は弾んだ声でこう言った。気づいたら1時間以上話していた。

バスの中で

あの言葉を発した日を境に彼は私について回るようになった。自校の教室で私を見かけると必要以上に話しかけてくる。私は当たり前のことを言っただけで、特別な感情はなかったので、話しかけられても笑って軽くあしらっていたが、それから数日後のある日、自校のバスで帰る為、乗り込んだところを彼が追いかけてきて紙袋の切れ端に書いたと思われる電話番号を渡してきた。自校のバスの運転手さんが「何やってんだよ!早く降りろ!」「こいつのこと、相手にしなくていいからね〜」と。彼は私に一言、「待ってるから‼︎」と言ってバスを降りた。

出逢い

これは私の青春時代〜現在に至るまでの話。

高校三年生の冬、私は誕生日が過ぎていたこともあり解禁になる前に運転免許取得のため、地元の自動車学校に入校した。そこでは同い年から親くらいの歳の方々との出会いがあり、同じ教室の皆んなはとても仲が良かった。ある日、お昼ご飯を食べに行こうと自校近くの中華料理屋に皆んなで行ったところ、同じ自校に通う数名の男子も来ていた。自校でのお昼休みにも関わらず、彼らはビールを飲んでいた。歳は同じくらいだ。驚いた私はとっさに「飲んでるのバレたらヤバいよ」と言ってしまった。それに対し「一緒に飲む?」と笑いながら答える彼ら。呆れて放っておく事にしたが、その数日後、自校の教室の片隅で缶ビール片手に笑ってる彼らをみつけてしまう。「飲み過ぎじゃない?体に悪いよ」なんの気無しに出た私の言葉が私自身の人生を変える事になる。